柿
6年前の10月6日、トヨタスタジアムで行われたピクシーの引退試合を、わたしは母の病室のテレビで観てました。なんでスタジアムへ行かんのと聞かれ、チケットがとれんかったんだわ、と答えたわたし。チケットはもちろんとれてました。ファンクラブの先行予約で申し込み、普段はサッカーを観ない友達や東京から来る仲間と一緒に行く予定でとっても楽しみにしてた試合です。
でもその前日に母の主治医から「あと数日でしょう」との宣告。
家族で話し合い、わたしがこの日から病院で寝泊りすることになったのでした。癌の告知はしてありました、でも余命は伝えてありません。それは母を一番理解する父の断固たる意志でした。言い残したいこともあるだろうと反対したわたしも、とうとう最期まで言えなかった。
この日も母の意識はしっかりしてて、昼間は普通に話ができました。柿が食べたいと言うので、皮を剥いて八つ割りにしたら、繊維に垂直に切ってと、母。スプーンですくえるくらい軟らかく熟した柿が大好物でした。色がきれいだからと9月からずっと窓際においてあったこの柿は、十分熟していたけどまだナイフがいる硬さだった。小さく切ったオレンジ色の実を3切れほど口にし、元気になるためにはとにかく食べないと、と言った母。最後の最期まで、生きることに積極的で、明日と未来を語る前向きな人でした。
翌朝、様態が急変した母は、家族全員に見守られて静かに息をひきとりました。
今日は母の七回忌。
わたしは今年も仏前に柿の実をお供えしました。
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